安藤忠雄氏設計の 「日本橋の家」 にて閑谷学校の写真展があると聞き訪れたところ、偶然オーナーの方がいらっしゃって一階のギャラリーだけでなく、上階まで建物全てを見学させていただきました。
ほぼ人のいない空間でじっくりと佇むことが出来る時間。
至福の時です。(住宅は基本的に少人数のための空間として設計されるので、大勢で見学すると空間の質が変わってしまう)
階段室に踏みこんだとたんに感じる、詩的で上質な空間。
限られた敷地内ながら、4階まで見通せる階段室のパースペクティヴと、2階から4階へ縦に繋がる吹き抜けの空間をとることで、雑踏の日本橋とは思えない豊かな空間を産み出されています。
「皆さんに、この空間を味わっていただければ、それで私は嬉しいんです。」
と仰られていたオーナーの心意気に、大変感じ入りました。
閑谷学校は植物事務所COCA-Zも数年前に訪れたことがあります。
(有名なカイノキの新緑 2011年5月8日撮影)
藩主の意向で、未来の宝となる子供の教育に力を入れるために創られた施設群。
施設を将来に渡って受け継ぐことが出来るように、建物の火除けとなるべく作られた土手のランドスケープや、
焼成が難しいけれど耐久性のある備前焼の瓦の採用など、随所に未来を見据えた設えがあり感銘を受けるのですが、植物事務所COCA-Zが最も心を動かされたのは 「椿山」 と呼ばれる藩主・池田光政の供養塚です。
残念ながらカメラのバッテリーが切れて、当時すでにボロボロだったガラ携 (10年目の現在も使用中) で撮った写真しか残っていないのですが、
スミレの花がチラチラと咲く芝生の塚の前には、掃き清められた砂地の中にツバキが沢山植えられていて、その赤い花が白い砂地の上にポツリ、ポツリと散華のように散り敷いています。
サッと光が挿すと木漏れ日が煌めいて、世界が変わります。
ツバキをこれほど植えた塚は見た事がないので、何故だろうと調べてみると、藩主を慕った家臣が藩主の意向を後世に伝えるため、供える灯明の火が消えない様、椿油の取れるツバキをたくさん塚の前に植えたとのこと。
藩主と教育に対する愛情に溢れる空間です。
植物事務所COCA-Zが訪れた時は丁度、小学生が課外学習で自ら箒を持って、この参道を掃き清めていました。
ツバキの落花が散華のように美しく見えたのは、枯葉が掃き清められていたからだったのです。
17世紀に創られた学問所が、こうして21世紀にも学童によって美しく維持されているとは。。。
数百年受け継がれる志を、まざまざと感じる事が出来る空間で、強く心を動かされました。