500年以上続き、世界でも最も古い民間による人工育成林業といわれる奈良・吉野林業(※)。
この文化遺産とも言える吉野杉材の良さを広く知ってもらいたいとの目的で、大阪市内のマンションをリフォームして、吉野杉を使ったインテリアのモデルルームが造られました。
植物事務所COCA-Zはモデルルーム撮影時の活けこみの御依頼を受けたのですが、打ち合わせ時にお借りした吉野林業に関する冊子がとても興味深かったので、花材を吉野の山で採集し、それを使えば、より今回の趣旨に合うのではないかというアイディアを提案させていただきました。
今まで国内、海外で行った展覧会も基本的に現地の環境にありふれている素材を使って、新しい美の価値観を提供したいと考えていたため、今回もその流れで出来れば面白いとも考えたからです。
提案を認めていただき、吉野に出掛けることになりました。
現地では清光林業株式会社の岡橋清元氏に現場を御案内いただくことになり、様々な興味深い話を伺えることに。
吉野は地質的にとても林道の建設が難しいそうですが、岡橋氏は車が通ることができる幅の作業道を高度なテクニックを使って敷き、作業効率を上げているとのこと(※)。
大規模な造成を行わなくてすむよう道筋を決め、法面はコンクリートで固めるのでなく、丸太を組んだり、石積みを施して自然植生が復活できるしつらえとし、植物の力で法面を維持させる方法をとっているそうです。
作業道があるお蔭で手入れの行き届いた山は、清々しい空気が流れていました。
翌日、山を巡って自然からいただいた花材をモデルルームにいけこみます。
杉材を使った空間が映えるよう、花は緑を中心とした、さり気ないものとしました。
<花材>テンナンショウの仲間の実、アケボノソウ、アセビ、スゲの仲間、ミズキの実
<花材> マツカゼソウ
<花材> クサギの実
<花材> ウツギの実、クサギの実、ミズキの実、ガマズミの実
<花材> スギ、クサギの実
照明を使った空間の撮影もあったので、撮影は暗くなるまで続きました。
和室の灯りは当初イサムノグチを置くことを考えていたそうですが、それではあまりにありふれていると言うので、結局、吉野和紙を使って植物事務所COCA-Zが制作することに。
前回のシンガポールで展示した作品もペーパークラフトと初挑戦の水墨画を使用しましたが、すでに業務が屋号から外れているような気もします(苦笑)
しかし初めてのことに挑戦する仕事は緊張もしますが、楽しいものでした。
※冊子 『500年続いた林業地「吉野の森」 森を育てる 森を使う。』 吉野の森コンソーシアム発行 参照